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安全なインプラントと危険なインプラント

インプラント・口腔外科  / 一般歯科  / 審美歯科
インプラント治療は、失った歯を補うための非常に効果的な方法ですが、高度な技術と慎重な計画が求められる治療でもあります。特に下顎の動脈に近い部位にインプラントを埋入する場合、適切な診断と安全対策が不可欠です。

他院での危険なインプラント症例について

実際に他院で行われた症例の中には、CT撮影を行わず、下顎の動脈に非常に近い位置にインプラントが埋入され、重大なリスクを伴うものも見受けられます。このような処置は神経損傷や大量出血などの危険を伴います。当院では、こうしたリスクを未然に防ぐために有効性の高い設備と技術を用いて安全性を最優先に考えています。

●他院で行われた危険なインプラントの症例

他院で行われたインプラントです。
通常のレントゲンで見ると一見、綺麗に手術が成功しているように見えます
しかしながら患者様は手術後、数年間ずっと口腔内や舌や唇にしびれるような違和感をお持ちでした。
当院にご来院していただき、原因を探ってほしいとのことでしたのでCTにて精密検査させていただきました。

●当院にてCT精密検査したら驚きの事実が判明


当院のCTでみるとなんと下顎管から約1mmしか距離がありませんでした。
下顎管とは下顎でもっとも大きな動脈と神経が通っている生命に関わる重要な管です。
インプラントの正しい知識がある歯科医師なら安全性を考慮し最低でも3mmは距離を取ります
わかりにくいと思うので下顎管に黄色で線を書いてみました。

素人目にもとてもギリギリの手術であることがわかるのではないでしょうか?
あと約1mmズレていたら動脈が破裂し命の危険もあり得ました。

手術後の数年間の違和感は下顎管のギリギリまでインプラントを押し込まれたことにより
神経が圧迫され、口腔内や唇や舌の神経が常に痺れているような違和感を感じている可能性が高いと説明させていただきました。
例えるならずっと正座させられてて足がしびれている状態が続いていると考えると想像しやすいでしょうか?

自分、または大事なご家族が実際にこの手術を受けたとしたらどう思いますか?

こちらの患者様は歯を取り戻すためにと大金を払って、
知らない間にあと1mmで動脈が破裂し命を失うかもしれない極地に立たされ、
数年間もずっと神経圧迫による唇と舌の痺れに悩まされてきたのです。

自分もプロですので悲しい気持ちを押し殺し歯科医師としてこの事実をひとつひとつご説明していくと、
目に涙を浮かべながら「安易に歯科医院を選んでしまった、最初からこちらの歯科医院にきていればよかった。」とおっしゃっていただけました。しかしながらそれはもう叶わないので自分も歯科医師としてとても悲しい気持ちと、このようなレベルの低い治療を行える同業者がいることに怒りを覚えました。

そのあとに患者様はこういいました。
「この手術をした先生は、手術はすごく上手くいきました。と自信満々に言ったんです。あれは何だったんでしょうか?」
自分はゾッとしました。医師とはいえ、人間である以上、多少の失敗をする場面はあるでしょう。
しかしながら最も怖いのは失敗を失敗だと認識できないことなのではないでしょうか?
手術後、何度も違和感や痺れを訴えるも「気のせいだ、手術はうまくいった」の一点張りだったそうです。

こちらの患者様に関しては動脈が近いこともあり、自分が在籍する歯科専門の大学病院と連携をとりインプラントを撤去し神経の圧迫を解除し入れ歯を製作する予定で現在、大学病院と当院の両方に通院していただいております。

名医とは何か?

昔の話ですが学生時代、尊敬している大学病院の教授に好奇心から「名医とはなんですか?」と尋ねたことがあります。
当時の自分は「失敗をしない医師」「手術が上手な医師」のような返答がくると思いこんでいました。

しかし返答は自分の予想を裏切るような内容でした。
「名医とは失敗に誰よりも早く気づける医師のことだよ。」

自分は目を丸くしながらいいました。
「失敗しない医師が名医なのではないのですか?」

教授は微笑みながら
「人間である以上、失敗しないなんて不可能だ。でも名医というのは失敗に誰よりも早く気づいて適切に対処してしまう。まるで初めから失敗なんてなかったかのように見事に挽回してみせるのさ。」

自分は医療という業界の真髄をわかってなかった。ただ医療ドラマのようなフィクションを真に受けて「名医=失敗しない医師」なんて安易な考えをしていた。そう深く反省したことを覚えています。自分のことを名医だなどという気はありませんが教授から教えていただいた「本当の名医」に近づけるように日々、精進を重ねております。

さて、話を戻します。

今回のケースも手術中もしくはインプラントと骨がしっかり結合する前である手術後3か月以内で、インプラントが下顎管に近づいてしまったことに気づければ少しネジを逆に回して遠ざけるか撤去してしまえば済んだだけの話です。


しかしながら発見に数年が経ってしまったためインプラントと骨はがっちり結合してしまい撤去には顎の骨ごと削る必要が出てきてしまいかなりの難易度となってしまいました。

失敗に早めに気づける医師であったらこちらの患者様はここまでご苦労はされなかったことでしょう。

不適切なインプラント手術を受けてしまうと

インプラントの寿命や成功率は、適切な処置が行われた場合とそうでない場合で大きく異なります。他院で不適切な処置が行われた例では、患者様が以下の問題に直面することがあります:

  1. 神経損傷による痛みや麻痺

  2. 下顎動脈に近接したことで生じる大量出血のリスク

  3. 骨吸収やインプラント周囲炎の早期発生

こうした症例の写真では、下顎の動脈に非常に近い危険な位置にインプラントが埋入されていることが確認できます。このような事態を防ぐためには、正確な診断と慎重な治療計画が不可欠です。


当院での安全対策

当院では、患者様の安全を確保するために以下の手順と設備を整えています。

1. CT撮影による正確な診断

CTスキャンを使用して顎骨の立体構造を詳細に把握します。これにより、通常のレントゲンよりも動脈や神経の位置を正確に特定し、安全なインプラント埋入計画を立てることが可能です。

2. サージカルガイド(手術用マウスピース)の使用

患者様の骨の形状に基づいて作成されたサージカルガイドを使用します。これにより、インプラントを正確な位置と角度で埋入することができ、安全性と成功率が向上します。

3. 経験豊富な歯科医師による施術
当院の医師はインプラント治療の豊富な経験を持ち、日本口腔インプラント学会のガイドラインに準拠した治療を行っています。


インプラント成功の要点

インプラント成功の要点は大きく4つあります。

  1. インプラントに痛みや不快感や感染などの症状がないこと

  2. インプラントに動揺(ぐらつき)がないこと

  3. インプラント周囲の骨吸収が年間0.2mm以下であること

  4. 患者様と歯科医師がどちらも満足していること

これらの条件が満たされることで、インプラントは長期的に安定して機能し、患者様の生活の質を向上させることができます。

日本口腔インプラント学会によると、適切な処置を行った場合、
上顎のインプラントの10年生存率は 90%以上、下顎では 94%以上 とされています。


当院での安心のインプラント治療

当院では、患者様一人ひとりに最適なインプラント治療を提供しています。CT撮影やサージカルガイドの活用を通じて、神経や動脈を避けた安全な埋入を行い、患者様に安心して治療を受けていただけるよう徹底しています。

インプラント治療をご検討中の方は、ぜひ当院にご相談ください。正確な診断から術後のメンテナンスまで、全力でサポートいたします。
栃木県栃木市で治療をご検討中の方はぜひ植竹歯科医院へご相談ください。
▶ 当院のインプラント治療について詳しくはこちら

【執筆者紹介】
・副院長:植竹貴弘
・栃木県栃木市出身
日本大学松戸歯学部総合診療科にてマウスピースを専門的に学び、プロスポーツ選手などの診療に携わる。
同じく保存修復科にて歯を抜かない治療(歯科保存治療)を学び、栃木市で唯一の認定医となる。
日々の診療の傍ら、歯科大学において歯科医師を目指す学生や研修医への指導も行っている。
インプラントについては口腔インプラント学会とインプラント再建歯学会に在籍し、日々研鑽を積んでいる。

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